先日書いたメインブログの記事に、id:hal9009 さんのコメントがついてた。

「思想の自由市場」という妄執 - U.G.R.R.

大切でない表現は誰がどういう基準で決めるか、自由市場がダメなら計画経済は上手くいったか、そもそも表現の自由論は独占防止という意味で修正市場主義ではとかいくらでも突っ込めるが自由意思論自体妄執だからなぁ

2021/03/11 23:41

b.hatena.ne.jp

この方にはこれまでにもいくつかの拙記事に対してコメントをもらっていて、だいたいは批判的な論調だったと思うけど、わりと見るべきところのあるものもあるんだよね。よそでのコメントを見かける機会もあるけど、法学について少なくとも全学共通科目程度の知識は身につけているように見えるし、あるいは学部卒くらいのレベルには達しているかもしれない。はてなにおいてこのレベルに達している人はきわめて希少だし、他学部出身なのに独学でここまで身につけられたのだとすれば素直に敬服する。

なのでまあ、この方からコメントを頂けるのを基本的には楽しみにしているんだけど、残念ながら一定分野において顕著にバランスを崩すところがあるのは否定しがたいというか。大変無礼な言い方になるのは承知しつつ、より広い分野において感心するようなコメント(もちろん批判も含めて)をいただきたいという私のワガママから、ダメ元でちょこっと申し上げておく。というか、言いたいことはすでに過去に書いてあるので、基本的にそこを参照してほしい。

聞く力のきたえ方 - U.G.R.R.

いちおう上記記事との関連で述べておけば、こと法学に関して、私はおそらくhal9009 さんより高い位層にいるので、ともかく一度私の主張の理解に努めてみてほしい。まず一番大事なのは反発ベースで読むのをやめること。そういう態度を捨てたうえで、私の記事を要約する。勝手読みじゃなくちゃんとした要約ね。で、その要約に照らして、自分の挙げた「突っ込」みが突っ込み(=記事内容に対する批判)になっているかどうかを確認してみるといいんじゃないかな。

ちなみに、hal9009 さんの「突っ込」みが突っ込みになっているかどうかはともかくとして、そこで述べられていることに対する私のスタンスというのは、記事をちゃんと読めば概ね分かるはずだと思うよ。

先日メインブログの方で紙屋(id:kamiyakenkyujo)さんの『不快な表現をやめさせたい!?』に対する批判を書いた。

ただ、本書に対しては他にもいくつか言いたいことがあって、そのうち重要なものについてはいずれ機会があればメインブログの方で改めて書きたいと思ってるんだけど、言いたいことの中にはあまり重要でないというか下世話な感じのトピックもあって、それについてはこっちで片づけてしまうことにする*1

で、そのトピックというのが太田啓子弁護士のツイートの取扱いで。私はツイッターの話題はあまり追ってないし、他人間のいさかいに口を出すのもなあ、という気持ちもありつつ、でもまあ完全に話題が落ち着いた現時点でも指摘されてないこともあって、そこがスルーされたままなのはよくないよな、ということで一応書く。

本書では、太田弁護士が「例のポスターは環境型セクハラ=法令上の人権侵害だ」との趣旨を述べたということにしたうえで、そうは言えない、と結論づけている*2。ポスターが法令上の人権侵害にあたらないことについては異論はない。

でもなあ……太田さん、そもそも例のポスターが「環境型セクハラだ」とは言ってないという。彼女が言ったのは「環境型セクハラしてるようなもの」*3。紙屋さん自身も多少自覚しておられるように見えるけど*4、これはそもそも若干「細かい部分」にこだわった感じのある議論だよね。私はそういう議論がダメだとは思わないけど、そういう「細かい」話をするのであれば、相手が正確にはどう述べたのか、といったことにはもっと気を配るべきだったんじゃないかな。

さらに、「環境型セクハラ=法令上の人権侵害」としているのもどうなのか。たしかに、セクシュアル・ハラスメントは男女雇用機会均等法11条1項に根拠をもつ法律用語的な側面もある。そのことを当然私は知ってるよ。でも一般の人がどれだけそれを知ってるのか。「セクシュアル・ハラスメント」という語は世間一般において、そういう法律用語的な意味に限定せず、もっとカジュアルに使われてるでしょ。

alu.jp

たとえばこれはいま適当に拾ってきたものだけど*5、この女の子のいう「Sexual Harassment」はたぶん法律用語的な意味での「セクシュアル・ハラスメント」にはあたらないよね。それでも私たちはこういう表現を詰めようとは思わず、普通に受容してるんじゃないかな。そのことは、日常語としての「セクシュアル・ハラスメント」が法律用語としてのそれよりも広い意味を持つものとして一般市民社会に浸透していることを示すものだと思う。まして、今回太田さんが言ってるのは「セクシュアル・ハラスメント」ではなく「セクハラ」だからね。さらに「いいかげん」な使い方が許容される余地は大きい。

そういう世間一般的な使われ方を無視して、わざと狭義に解釈したうえで批判するというのは、太田さんが法曹であることを考慮したとしても、あまりに意地悪すぎるんじゃないかなと私は思うけど、どうですかね。 

 

……ちょっとアルコールが入ってることもあって失礼な物言いになってしまったかもしれないけど、経歴を調べると紙屋さんは出身大学が同じっぽいので、 後輩が生意気なことを言っていると思って笑って許してくださるとうれしいです。

ああそれと、本書103頁の注2で太田弁護士のツイートのURLを示しておられるけど、誤ってますよ。「status」の部分が「atus」になってる。私が参照したのは初版1刷だけど、まだ直ってないなら修正した方がよいかも。参考までに。

*1:しかしメインブログの過去記事にも、こっちに移した方がいいようなのが結構あるんだよな……。どうしたものか。

*2:本書101頁から109頁。

*3:https://twitter.com/katepanda2/status/1183729350207623169

*4:本書105頁。

*5:吉元ますめくまみこ』。作者および出版社の承諾のもと、漫画のコマのブログ貼り付け等を自由に行えるという「アル」のサービスより、ってことを一応追記しておく(3月8日)。

クマのプーさん2冊。A.A.ミルン、石井桃子訳。

クマのプーさん (岩波少年文庫 (008))

プー横丁にたった家 (岩波少年文庫(009))

有名だけどなぜかこの年まで読むことがなかった。どこかで聞いた気がする「何もしないをする」は2冊めの方に出てくるのね。実はちょっと切ないセリフだった。幼年時代とのわかれ。

原文で読まないと作品のよさが十分に分からない感じがあるので、まあそのうちに。

 

香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(ゲーム条例)。

香川県の“ゲーム条例”めぐり 高校生ら「憲法違反」県を提訴 | IT・ネット | NHKニュース

いかにも勝ち目のなさそうな訴訟。もちろん、この訴訟自体には良い印象も悪い印象もない。勝ち目がないと思うだけ。ただ、こういうのが手放しで称賛されるあたりに、良くも悪くもこんにちのネット世論イデオロギーがあらわれているとは感じるかも。

あ、でも訴訟自体には良い印象も悪い印象もないと言ったけど、原告として高校生(子ども)の方が前面に出てるのは、耳目を集める意図が透けて見えるようで、あまりいい気はしなかったかな。

ゲーム条例は子どもに義務を課すものじゃない。「努力義務だから―」とかいう話ではないよ。努力義務すら課されてないの。ゲーム条例で(努力)義務を課されてるのは保護者の方。だから、筋論で言えば保護者が先頭に立つべきなんだよね。義務を課されて権利を制約されている可能性があるのは、一次的には保護者の方なんだから。なのに、やたらと高校生アピするのは、やっぱ話題を集めたいんだろうな、と。いや、別にいいけどね。個人的に好感が持てないってだけで。

しかしまあ、ありえないけど、努力義務でもダメとなったら、アウトの条例なんて山ほどありそうだな。一部自治体の乾杯条例とか、「自治体や事業者が行う清酒普及促進の取組に協力するよう努めるものとする」みたいなのもあるからね。「特定事業の普及に協力せよ!」ってかなりヤバくない? こういうのの方がよほど問題含みだと思う。

しゃっくりの理由

人力はてなに質問を投稿*1。質問文を置いておく。

次のようなときによくしゃっくりが出る気がします。

暑い日に

ある程度の時間車を運転したあと

それなりに重量のある荷物を肩にかけて降車したとき

偶然や気のせいである可能性もかなり高いとは思うのですが、科学的に「上記のようなときにしゃっくりが出やすい」ということがあったりするのでしょうか。もしあるなら、どのような理由で上記のようなときにしゃっくりが出やすくなるのか教えてください。

しゃっくり、地味に辛いんだよね……。

*1:https://q.hatena.ne.jp/1601371716

覚醒剤事犯が多い理由

人力検索はてなに質問を投稿*1。質問文を置いておく。

わが国での薬物事犯は覚醒剤取締法違反がその大半を占めます。

これはわが国に特有の傾向だと思います。

なぜわが国ではこれほど(他の薬物事犯に比して)覚醒剤事犯が多いのでしょうか。

参考文献等とともにご教示いただけるとうれしいです。

ついに「覚せい剤」 が「覚醒剤」になってしまった。個人的には、前の表記になじんでいたし画数も少なくてすむので、「覚せい剤」の方がいいのだが。

それはともかく、覚醒剤は日本と関わりの深い薬物ではある。そもそも日本人が作ったものだし、戦後軍用の覚醒剤が大量に民間へ流れたということもあった。その辺りが日本で覚醒剤事犯の多い理由の一端だったりするのだろうか。

 

【2020年9月20日追記】

前回に続き回答なし。ま、そんなものかな……。

*1:https://q.hatena.ne.jp/1599960267

id:DavitRice さんのこの記事を読んで不思議に感じたことなどのメモ。

人種は存在しない…のか? - 道徳的動物日記

私自身は、「人種は存在しない」的な物言いへの抵抗に共感するところがある。

たいていの社会問題の扱い方には実学系の方向と思想系の方向とがあって、総合的な視座を得るためには両方必要なのだろうとは思いつつ、どうも後者は敬遠してしまう。「セックスとはつねにすでにジェンダーである」(バトラー)とか、しゃらくせえって感じで言葉遊びとしか思えない。こういうことばかり言ってると最終的に一歩も動けなくなるのではないかという危惧がある。

たぶん私の中に人文学を軽んじる気持ちがあるんだろうね。新たな視座の提供にもそれなりの意義がありうるのは否定しがたいし、改めないといけない。

ただ、こういうことをDavitRice さんのような経歴の方がおっしゃるのは不思議。この方は倫理学をやってらした(やってらっしゃる?)方のようなんだけど、先の実学系・思想系の区分で考えれば、倫理学なんて思想系のど真ん中で、まさに「言葉遊び」*1の学問でしょう。いったい自身の専攻とどのように折り合いをつけておられるのか、純粋に気になる。

というか、考えてみれば「社会学的」*2な物言いに反発しているのは、たいていが同じような言葉遊びをしてる連中*3なんだよね。このあたり、ある種の同族嫌悪のようなものがあったりするのだろうか。

*1:失礼。「」を付しているのでご容赦ください。

*2:すでに述べたようにたいていの思想系の学問は共通の性質を有するので適切な形容ではないだろうが。

*3:というよりは、そもそも学がないので言葉遊びに興じることしかできない連中だね。それで本人は「客観的」だとか「論理的」だとか思い込んでるんだから救いがない。